日本の計算機科学者、技術者。スーパーコンピュータ「京」の開発責任者として知られています。
2017年4月に当社の技術顧問、2023年2月より非常勤取締役に就任いたしました。
ごあいさつ
私は長年に亘り大型コンピュータの開発に携わってまいりました。その集大成として、スーパーコンピュータ『京』の開発を担うことが出来た事は大変幸運でした。すでに『京』は『富岳』にその役割を譲りましたが、今まさに、ICT技術が仕事の仕方や社会の仕組み、そして人々の暮らしにいたるまで大きな変革をもたらそうとする中にあって、私はとくに『AI』に焦点をあてて今も研究を重ねております。
今後は、このAI技術を活かし、製品開発やサービスの質の向上に協力していきたいと考えております。
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プロフィール
経歴
1980年 | 東京大学工学部舶用機械工学科卒業 |
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2008年 | 富士通株式会社 次世代テクニカルコンピューティング開発本部長 |
2009年 | 富士通株式会社 常務理事 |
2012年 | 富士通株式会社 フェロー |
2013年 | 国立研究開発法人 理化学研究所 計算科学研究機構 統括役 |
2017年 | 当社 技術顧問 |
2023年 | 当社 非常勤取締役 |
表彰
2005年 |
経済産業省 第一回ものづくり日本大賞 優秀賞 「最先端半導体テクノロジー90nmを使用したサーバ用ハイエンドプロセッサの開発により」 |
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2006年 |
財団法人新技術開発財団 市村産業賞 貢献賞 「最先端半導体テクノロジーを使用したサーバ用プロセッサの開発により」 |
2006年 |
社団法人発明協会 関東地方発明表彰 発明奨励賞 「基幹サーバ用プロセッサの分岐予測制御技術の発明により」 |
2011年 |
日経BP社 第10回日本イノベーター大賞 特別優秀賞 「スーパーコンピュータ「京」開発チーム代表」 |
2012年 |
文部科学省 文部科学大臣表彰 科学技術賞(開発部門) 「スーパーコンピュータ技術の開発育成により」 |
2013年 |
紫綬褒章(科学技術分野)の授与 「ハイエンドコンピュータを実現する高性能・高信頼CPU技術の開発」 |
AI技術研究
「AIブームと言われて久しいですが、ディープラーニングには、画像認識などに止まらない大きな可能性があると思います。その一つがAIによるデータの生成で、実在しないデータを生成したり、存在するデータの特徴に沿ってデータを変換できます。
それを担うのが、VAE(Variatinal Auto-Encorder, 変分オートエンコーダ)や、GAN(Generative Adversarial Networks, 敵対的生成ネットワーク)です。これらを使って、画像合成をはじめとする生成モデルのみならず、物体検出や分類、異常検知などへの応用例もあり、さらにテキストや、音楽、動画、医療データなど幅広い拡張研究が盛んに行われています。
そういう状況を踏まえ、ささやかな私のAI研究の一つとして、VAEとGANのハイブリッド構成で、竹田社長や私を含む日新ネットワークスの社員80名の顔写真を学習させてみました。
そしてAIが顔の特徴を潜在変数の関数として捉えた様子を見てみることにしました。そのために学習済みのAIで、潜在変数のうち2つをXYの2軸にとって、その値によって変化する画像を描いたり、潜在変数の原点で画像を描いたりしてみました。
手持ちのPCで学習させるために、顔写真の解像度も落としており、また、VAE、GANのネットワークもごく小規模のため、画像の品質は低く、特に平均顔では目も鼻も口もぼやけています。しかし、VAEやGANの動作原理を確認し、これらをうまく学習させることの難しさや、実用化に向けた多くの課題を確かめることが出来ました。
世界のIT巨人たちは、多くの優秀なエンジニアを集め、莫大な投資を行って、日々技術開発を行っています。それらは、すでに実用レベルに達したものもあれば、そうでないものもあります。しかし、必ずや近い将来、こうした新しい技術が、社会を変える大きな力を持つようになることでしょう。
変化が加速していく時代の只中にあって、その変化に適応し、よりよい社会を築いていくためには、その変化を牽引する技術の見極めがとりわけ重要です。そのためにこそ、これからも研究を進めていきたいと考えております。
AIに3つのパターンで描かせた顔画像です。
1.日新ネットワークス社員の900面相
どの顔も、日新ネットワークスの社員の顔画像を学習したAIが描いたもので、一つではない様々な顔かたちの特徴を与えられた乱数の値に応じて組合わせています。だから、日新ネットワークスの誰かにそっくりな顔もあれば、そうでないものもありますが、日新ネットワークスの顔かたちの特徴の範疇には入っているはずで、まさに日新ネットワークス900面相です。
2.日新ネットワークス社員の顔の連続変化
潜在変数を大小9通り、2軸の組み合わせで81通りの変数を与えて描かせた顔画像で、潜在変数の値の組み合わせによって顔画像が連続的に変化していく様子を見ることが出来ます。
3.日新ネットワークス社員の平均顔
潜在変数の原点に位置する顔画像を描かせたものになります。個々の顔の違いではなく、日新の顔全体の特徴をあらわした平均顔といえます。